舞台は神獣の住まう4つの地域
この世界ではことの他大きく、ことの他賢い生き物達を選ばれた生物として神獣と呼ぶ。神獣はあくまでも獣である。人の言葉を喋るわけでもなければ、信託を下すわけでもない。ただそこに、人智を超えた何かしらの畏怖を覚えるからこそ、彼らは神なのである。人々は神獣を部族の守り神として奉るが、その重みや神話の在り方は部族によって様々である。
<砂漠の民>
イメージ:アラビアン、中東
神獣:鯨 ナギル=カナル『砂海の守護者』
地域名:シャレンディーノ
暮らし:
寒暖差の激しい砂漠のど真ん中、オアシスに集うように大きな街があり砂壁で出来た家々が立ち並ぶ。街を少しでも離れれば砂塵で瞬く間に家の影は消え失せ砂漠に取り残されるため、即ち死が待ち受ける。四地域の中で最も過酷な地であるといっても過言ではない。故に、子供たちはよくよく街から離れるなと言い聞かされて育ち、また罪人は裸一貫で街から放り出される。しかしそんな過酷な地である反面、街全体としても民の雰囲気としても非常に開放的で友好的。商業が盛んであり、衣服や装飾品の文化が最も発達している地域でもある。
砂漠の民は皆生まれた時に親から『鯨の涙』と言われる硝子玉をプレゼントされ、大きくなるとそれを思い思いの装飾品に加工して身につける。
鯨に愛された者『ネレルヴァ』
100人に1人の割合で生まれる、そう珍しくもない予知能力者。予知といえども、多くは雨季の訪れを予感するだけのことで「そういえばお隣さんがそろそろ雨季が来るって言っていたからお祝いの準備をしなければね」といった具合。ネレルヴァは風の音を聴き、空気の湿り気や振動を肌身に感じることで雨季を知る。時折より聴覚の鋭い者が生まれるが、彼らは竜巻の訪れや鯨の鼻歌を聴くこともできる。しかし皆一様に新月には海に還りたい還りたいと啜り泣き、夢遊病者のように無意識下の内にふらふらと砂漠へ向かう弊害がある。
どこまでも果てしなく続く砂の地平
立ち上る蜃気楼 ゆらりゆらりと
天に坐す太陽 ぎんからきんと
旅人よ、あなたを歓迎しよう
されど昼に夜にと気を緩めることなかれ
熱砂の洗礼は何人もわかつことなく出迎える
ここは灼熱の国 シャレンディーノ
<草原の民>
イメージ:モンゴル
神獣:狼 テヨテルド『燎原の覇者』
地域名:ロワンド
暮らし:
盆地になった広い草原に、血族『ノンナ』に分かれて遊牧しながら生活している。基本は3親等ほどで生活を共にしている。ただし近親相姦を避け情報交換をするために、季節の変わり目に何となく幾つかのノンナがある一定の場所に集って生活する。ある一定の場所とは、その年その時期に家畜の餌となる草がよく生える場所で、それを予期して草原の民独特の感覚で集まることになる。
暮らしぶりは遊牧の民と似ており、ゲルと呼ばれる移動式家屋で暮らし、羊や山羊を遊牧させながらの生活をしている。だが大陸全体を巡る遊牧の民とは違い草原の民は草原の中でのみ移動をし、ロワンドを出ていくことはない。
部族全体の雰囲気としては閉鎖的であり、他部族との交流は滅多にない。但し遊牧の民にはシンパシーを感じるのか、広い広い草原で運良く顔を合わせることがあれば兄弟として迎え入れることもある。
狼に愛された者『ヴァンテル』
草原に住まう者の中から低確率で生まれる人狼のこと。例え生まれが他部族であろうとも草原に居着いた者であればヴァンテルの子を孕むことがある。彼らは、任意で狼としての姿と人としての姿がとれる。ケモ耳といった狼と人の混ざった姿にはなれない。しかし、14の年を迎えると狼として生きるか人として生きるかを選ぶことになる。14歳になって初めての満月夜を越すと以降姿を変えることはできない。狼として生きることを選べば野生で暮らし、人として生きることを選べば変わらず村落で暮らすことになる。狼として生きることを選んでも人の頃の記憶は残るし、人として生きることを選んでも狼の頃の習性が僅かに残る。
人狼が混じった狼の群れは人や家畜を襲わず、また元人狼の人間は体格に恵まれることから、人狼の子が生まれるとノンナ全体でお祝いムードになる。